重症急性呼吸器症候群(SARS)関連情報

今冬のSARS対策について


平成15年12月 厚生労働省

はじめに

 SARS(重症急性呼吸器症候群)は、SARSコロナウイルスを病原体とする新しい感染症で、これまで次のようなことが分かってきましたが、厚生労働省では、今冬に備え、感染症法及び検疫法を改正するとともに、以下の対策を行います。

1 SARSについて

(1)SARSとは、どんな病気か?
 SARS患者と接した医療関係者や同居の家族など、患者のせきを浴びたり、痰や体液等に直接触れる等の濃厚な接触をした場合に感染し、2日〜7日、最大10日間程度の潜伏期間を経て発症します。潜伏期あるいは無症状期における他への感染力はない、あったとしても極めて弱いと考えられています。
 また、SARSコロナウイルスは、エタノール(アルコール)や漂白剤等の消毒で死滅します。現在のところ患者が触れた物品を通じてSARSが人へ感染する危険は小さいと考えられています。

(2)SARSが疑われるのは、どんなときか?
 SARSが疑われるのは、
 (1) 10日以内にSARSの流行地域から帰国するか、又は10日以内にSARS患者の痰や体液に触れる等の濃厚な接触があった方で、
 (2) 38℃以上の発熱、
 (3) せきまたは息切れ等の呼吸器症状がある方です。
 なお、本年7月5日にWHOにおいてSARS流行の終息宣言が行われた後は、10月現在、WHOが指定する流行地域はありませんが、もし、新たに流行地域が指定されたら、直ちにお知らせします。

(3)医療機関を受診する際には?
 38℃以上の発熱又はせき等の症状があり、(2)(1)の要件をみたす方(流行地域から帰ってきた方など)は、必ず事前に最寄りの保健所又は医療機関に電話で相談の上、指示に従ってください。

(4)SARSの治療法は?
 ウイルスによる肺炎に対して、全身状態の管理や呼吸管理などの症状を和らげる治療を行います。

(5)予防法は?
 外出先から戻った時に手洗い、うがいを行うことはSARSだけではなく、多くの感染症に共通する予防法です。
 現在、SARS予防のためのワクチンはなく、世界各国で研究中です。

2 SARSへの対策

(1)情報の収集と、その提供
 WHOなどが公表するSARSに関する情報について、迅速に収集するとともに、その情報を提供します。
(1) ホームページなどによる情報提供
ア)ホームページ
 SARSについての詳細な情報について、下記のホームページに掲載しています。
厚生労働省ホームページ (http://www.mhlw.go.jp)
国立感染症研究所ホームページ (http://idsc.nih.go.jp)
厚生労働省検疫所ホームページ(海外渡航者のための感染症情報)(http://www.forth.go.jp)
イ)啓発リーフレット
 基礎知識、予防法、疑いのある方の医療機関の受診の仕方、その他の対策について記載したリーフレットを作成しています。
(2) 相談窓口の設置
 インフルエンザ・SARSに関する相談窓口を設置しています。
  開設時期平成15年10月20日〜平成16年3月19日
  対応日時月曜日〜金曜日(祝日除く)9:30〜17:00
  電話番号03−3200−6784
  FAX番号03−3200−5209
  E-mailinful@npo-bmsa.org

(2)検疫等
 国外でSARSの再流行が起こった場合、以下の(1)から(4)の対応を行う予定です。また、SARSコロナウイルスを保有している疑いのある動物については、現在も(5)の対応をしています。
(1) 渡航に関する助言
 SARSの流行地域へは、不要不急の旅行を延期するよう勧告を出します。
(2) 質問票の配布
 流行地域からの航空便について、機内で質問票を配布し、健康状態を確認します。
(3) 体温測定の実施
 発熱のある方を確認するため、サーモグラフィーや体温計により体温測定を実施します。
(4) 入国後の健康状態の確認
 SARSを治療している医療機関で働いている方など、SARS患者と接触のあった入国者については、入国後も一定期間(潜伏期間)、検疫所への体温等の健康状態の報告を義務付け、万一異状を生じた場合は、検疫所からその入国者がいる都道府県等に通知します。また、通知を受けた都道府県等は、入国者に対して直ちに調査を行い、入院等の必要な措置を講ずることとします。
(5) 動物などの輸入禁止
 SARS類似コロナウイルスが分離されたハクビシン等の動物の輸入を禁止しています。

(3)医療の確保
 都道府県において、SARSの診療を担当する医療機関を指定し、SARSに対する医療提供体制の整備を行っています。
(1) SARS入院対応医療機関
 全国で287施設の入院対応医療機関(陰圧病床739床)が整備されています。(平成15年5月27日現在)。
(2) SARS外来診療協力医療機関
 全国で759施設の外来診療協力医療機関が整備されています。(平成15年10月6日現在)。
(3) 設備整備、感染防御資器材等への補助(国庫による支援措置)
 SARS入院対応医療機関、SARS外来診療協力医療機関に対し、感染症病室簡易陰圧装置、SARS患者とその他の患者を区分するパーティション設置等の設備整備や、マスク・ガウン等の感染防御資器材の備蓄等に対して補助を行っています。さらに、SARS患者が、一般医療機関を受診した場合に備え、一般医療機関における院内感染防御のためのマスク・ガウン等の備蓄に対しても補助を行っています。
(4) マスクの出荷状況
 医療機関等で感染防止のために用いられるN95マスクの一月当たり出荷量は約132万枚にまで大幅に増加しています。(従来は、約15万枚/月)

(4)院内感染等の予防
(1) 院内感染対策
 「SARS管理指針」「SARSに対する消毒法」を都道府県等を通じて医療機関に周知し、SARS患者を受け入れる医療機関における院内感染対策の徹底を図っています。また、国立国際医療センターのホームページに感染症病棟用のマニュアルを掲載しています。
(2) 生活衛生関係営業における防止対策
  ホテルや飲食店などに対し、感染防止対策マニュアルを示しています。
  (財)全国生活衛生営業指導センター作成
   旅館業等の生活衛生関係営業における重症急性呼吸器症候群
   (SARS)感染防止対策のための自主管理マニュアル
         http://www.seiei.or.jp/idx07/ls_info.htm

(5)実地訓練の実施
 SARSが発生した場合に備えて、(1)搬送、(2)疫学調査、(3)院内感染対策、(4) 地域内伝播対応等を目的とした訓練を、全ての都道府県において11月までに実施することとしています。10月20日現在、42都道府県がすでに訓練を実施しており、残りの府県においても、11月までに実施を予定しています。

(6)研究開発の推進
 厚生労働省及び文部科学省の研究費を緊急に確保し、SARSの迅速診断法、ワクチン、治療法等に関する研究開発に取り組んでいます。
(1) 診断・検査
 国立感染症研究所と民間会社が共同で、15分〜30分でSARSの診断ができる検査キットのモデルを作成しました。今冬の実用化を目指して、現在、香港、ベトナム等と協力しながら、その精度のチェックを行っています。
(2) ワクチン
 国立感染症研究所や国立療養所近畿中央病院等が共同で、SARSワクチンの開発に取り組んでおり、DNAワクチンや不活化ワクチンの開発に着手したところです。しかし、ワクチン開発にはウイルスの病原性や免疫機能等の解明に関する基礎的な研究が必要であり、また、ワクチンの安全性や有効性の確認のために年単位の期間を要しますので、開発にはさらに数年かかると考えられます。
(3) 治療法
 海外の症例分析やシンガポールの病院からの聞き取り調査等により、現時点での標準的な治療法を示した「SARS治療プロトコール」を作成中です。既存の薬剤については試験管内の実験をしている段階で、一部の薬剤については、試験管内での効果を確認していますが、患者に対して有効性が証明された治療薬はまだありません。

(7)省庁間の連携
 SARS事案・関係省庁緊急連絡窓口を設置するほか、必要に応じて連絡調整会議を開催して、連携をとっています。

3 国内にSARS患者が出た場合の対応

(1)情報の提供
 SARSに関して入院勧告等の行政措置がとられた場合には、個人のプライバシーに最大限配慮しつつ、公表が必要な情報については、迅速に情報を公開します。 国立保健医療科学院の健康危機管理支援情報システムにより、都道府県等(保健所政令市・特別区を含む)に同時に情報を伝達できるようにします。

(2)対策本部・オペレーションセンター
 国内で患者が発生した場合は、対策本部を開催し、また広域的な対応が必要な場合はオペレーションセンターを設置して、対応にあたります。なお、その際、多元電話会議システムを活用します。

(3)感染動向の把握(積極的疫学調査)
 緊急時においては、感染動向の的確な把握及び原因の究明について、国が都道府県等による疫学調査について必要な指示を行うとともに、国も専門家を派遣して都道府県と共同で疫学調査を実施します。

(4)まん延防止のための対策
 緊急時においては、国の責任において、患者の入院、消毒等の措置等について都道府県等に対し必要な指示を行います。また、国は必要に応じて専門家を現地に派遣して、支援を行います。

 (注)「流行地域」と「伝播確認地域」は同義ですが、ここでは、一般的な「流行地域」を使用しています。



新たに流行地域が指定された場合は、流行が起きている地域から、帰国された方は、帰国後10日間は朝夕の体温測定を実施し、各人の健康状態を確認してください。
 また、帰国後、10日間以内に発熱、せき、呼吸困難の症状が現れた方は、最寄りの保健所に相談するか、感染地域からの帰国であることをあらかじめ告げてから医師の診察を受けてください。(その際は、マスクを着用して下さい。)
重症急性呼吸器症候群(SARS)に関する情報提供体制について


「重症急性呼吸器症候群」関連情報(詳細)へ


中国産ハクビシン等に対する輸入規制の実施について(重要)


重症急性呼吸器症候群(SARS)のリーフレットについて


「厚生労働省におけるSARS感染地域からの海外研修生受入等の方針」について(参考情報)
 厚生労働省では、かつてSARSが発生した地域からの海外研修生受入等については、本通知を内部部局等に通知し、研修受入の判断の参考としておりますので、お知らせいたします。


「重症急性呼吸器症候群(SARS)の診断・治療ガイドラインについて」(参考情報)(PDF:42KB)


照会先
厚生労働省健康局結核感染症課
電話03−5253−1111
入江 内2379
中里 内2388